研究

Species abundance pattern in a random community model

わたしたちが物理学の視点から生態学の研究を行う理由の一つとして、生態系には、典型的な複雑系の一つとして、その種構成などといったシステムの詳細に依らない、普遍的な性質が見出される、ということが挙げられます.そのような普遍的な性質が現れるメカニズムを知ることが、生態学研究のみならず複雑系一般の性質の理解に寄与し得るのではないかと考えられます.生態系で観測される普遍的性質のうちでも、最もよく調べられてきた古典的なものの一つに、種の豊富さのパターンがあります.生態系を構成する様々な種の個体数を大きい順に並べてプロットしてみると(Rank-abundance分布)、場所も構成種も全く異なる様々な生態系に共通して、ある特徴が見られます.
 わたしたちは、レプリケーター方程式などの一般的な群集モデルを用いて、単純な仮定と少ないパラメータから種の豊富さのパターンが見出される条件を調べています.最近では、統計力学の理論を用いて、生態系の生産力や成熟度、個体数変動の恒常性の度合いなどに関係する単一のパラメータと種の豊富さのパターンの関係を導きました(Tokita, 2004).これまでにも様々なモデルが提案されてきていますが、複雑な種間相互作用をもつ多種系に対する種の豊富さのパターンが、本研究において初めて解析的に得られました.さらに,古典的に知られる正準仮説も満たされることがわかりました.
 Rank-abundance分布は、ある個体数をもつ種が何種いるかという「種個体数分布」と相互に変換可能な関係にあり、典型的な種の豊富さのパターンは、種個体数分布が対数正規分布に近い形になることと関係しています.対数正規分布は、生態系以外にも、細胞内蛋白質の個数の分布などの様々な複雑系において見出されているので、ここでの研究をより広い文脈での複雑系の理解に結びつけられるのではないかと考えています.

右図:ランダム群集モデル(対称ランダム相互作用行列)に対して解析的に導かれた種の豊富さのパターン.pは群集の生産力や成熟度に関係するパラメータで、pが小さい場合は極地などの厳しい環境、もしくは未熟な群集に対応し、pが大きい場合は、熱帯など種数の多い群集に対応します.

参考












© Copyright 2013 Kei Tokita, Powered by Pukiwiki.  Last-modified: Tue, 10 Jun 2014 11:56:46 JST (1982d)   リロード   新規 編集 凍結 差分 添付 複製 改名   トップ 一覧 検索 最終更新 バックアップ   ヘルプ   最終更新のRSS