変動する自由度を持つ進化力学系における大量絶滅

時田恵一郎(ハーバード大、阪大)、安冨歩(名大)

Physical Review E (米国物理学会論文誌セクションE), 60 (1999) 842-847.

数理生物学におけるいわゆるレプリケーター方程式に絶滅の効果を加えることにより、種の多様性、すなわち方程式の次元、が時間的に変動する一般的なモデルの性質を調べた。ここで扱ったモデルは、1970年代前半にRobert Mayが全種共存解の局所安定条件を導いたランダム非対称相互作用群集モデルに対応する.スーパーコンピューターを用いた大規模な数値計算によりシステムの大域的な性質とそのパラメータ依存性を調べた。ある閾値を下回ると強制的に個体数をゼロにするという「絶滅の閾値」の効果により、元のレプリケーター系とは全く異なる振舞いが見いだされる。モデルの振舞のパラメータ依存性を数値的に解析することにより、外的な環境変動の影響によってそれまで隔離下で進化してきた複数の生態系が融合して、巨大なランダム相互作用系が偶発的に形成されると、ある一定の時間ののちに大量絶滅が起こることがわかった。また、絶滅を逃れた種構成で「アトラクタ」を定義すると、そのベーシンの広さの分布がべき分布に従うことがわかった。これは環境変動により群集の構成が頻繁に変動するような生態系における種の豊富さのパターンを特徴付けるものと考えられる。ここでの理論は、生物の大量絶滅に対する古生物学的理論の基礎となる可能性がある。また、絶滅の力学は、方程式の次元の変動が本質的であるような力学系のプロトタイプとみなすこともできる。


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